子どもに「なんで涙って出るの?」と聞かれたとき、うまく説明できなくて戸惑ったことはありませんか? 私も息子に突然聞かれて、言葉に詰まってしまった経験があります。涙は悲しいときだけじゃなく、嬉しいときや痛いときにも出るもの。実は、その裏にはちゃんと理由があって、体と心のどちらにとっても大切な役割をしてくれています。
この記事では、親子で一緒に読みながら「涙のひみつ」がやさしく理解できるようにまとめました。気持ちの説明にもつながるので、子どもの心のケアにも役立ちます。ぜひ、おうちの会話の中でそっと使ってみてください。
涙はなにをしてくれているの?
目を守る“お掃除やさん”
私たちがまばたきをするたび、涙は目の表面にふわっと広がり、細かいホコリや花粉、見えない汚れまで流してくれます。
子どもが外で元気いっぱい遊んだあと、目をこすりながら「なんかゴロゴロする…」と言うことがありますよね。そんなときに自然と涙が出てくるのは、目が「自分でお掃除しよう」としているサイン。涙はただ流れてくるだけではなく、目の健康を守るために欠かせない“働き者”なんです。
また、涙には弱い殺菌作用もあり、細菌が入り込んだときに増えすぎないように助けてくれます。子どもがよく目を触ってしまう時期ほど、涙がしっかり働いていてくれることが心強く感じられます。
「涙が出るって悪いこと?」と子どもに聞かれたら、「涙は目のお掃除をしてくれてるんだよ」と伝えると、安心したような表情を見せてくれることもあります。
乾燥から目を守るバリア
エアコンの風が直接当たったり、長時間のタブレット・テレビ視聴で瞬きが減ったりすると、目はあっという間に乾燥してしまいます。
そこで働いてくれるのが、涙がつくる“うるおいの膜”。これは「涙の層」と呼ばれ、目の表面に薄いフィルムのように広がって、乾燥を防いでくれます。
この涙の膜がしっかり張られていることで、目がスムーズに動き、光もにじまず、快適に過ごせます。逆に乾燥すると、かゆみ・ゴロゴロ感・視界のぼやけなど、小さな不快感が次々に起きてしまいます。
私自身、PC作業が多い日は目の乾燥を強く感じることがありますが、意識的にまばたきを増やすだけで「うるおいが戻ってきた」と感じられる瞬間があります。涙が毎日こっそりと働いてくれている証拠ですね。
子どももテレビやタブレットに集中すると瞬きが少なくなるので、ときどき休憩を入れるだけで涙のバリアがしっかり機能してくれます。
なんで悲しいと涙が出るの?
心があふれたサイン
悲しい出来事があったときに涙が出るのは、心の中にたまった感情を外へゆっくり流し出し、気持ちを落ち着かせるためだといわれています。
大人でもつらいことがあると涙がこぼれるように、子どもはもっとシンプルに気持ちが表にあらわれやすいもの。心がぎゅっと苦しくなったとき、涙が“出口”になってあふれ出ることで、心の負担が少し軽くなるのです。
たとえば、子どもがケンカして帰ってきたとき。表情は強がっていても、「どうしたの?」とひと言かけるだけで涙が一気にあふれることがありますよね。あれは、心がもう限界に近くて「助けてほしい」「気持ちを受け止めてほしい」というサイン。
涙には、心の緊張をほぐし、自分を守るための自然な働きがあると知っておくと、親のほうも落ち着いて寄り添えるようになります。
小さな子どもほど言葉のストックが少ないため、悲しみや悔しさを言葉にすることが難しい場面が多くあります。そんなときに涙が出るのは、心が感情を整理しようとしている証拠。「涙=弱さ」ではなく、「涙=心の整理が始まった合図」と捉えると、親自身の受け止め方も優しくなります。
親子でできる“気持ちの言葉”の手助け
子どもが泣いているとき、ただ「泣かないで」と言ってしまうと、気持ちの出口がふさがれてしまうことがあります。
私自身、息子が泣いて戻ってきたときには、まず「涙が出るくらい悲しかったんだね」と声をかけるようにしています。すると、子どもは驚いたように顔を上げて、少しずつ話し始めてくれるんですよね。
感情に名前をつけることは、子どもにとってとても大切な経験です。
・悲しい
・悔しい
・びっくりした
・怖かった
このように、親が先に言葉を差し出してあげると、子どもは「自分の気持ちってこういう名前なんだ」と理解していくようになります。
また、涙を否定しない言葉がけは、子どもの自己肯定感にもつながります。泣くことを恥ずかしがらず、自分の気持ちを大切にできる子に育つ土台にもなるからです。
涙は、子どもの心が育つために必要なプロセス。親が寄り添ってあげることで、その涙はぐっと意味あるものになります。
嬉しいときにも涙が出るのはなぜ?
感動の気持ちが身体にもあふれる
嬉しいのに涙が出る――これは、大人にも子どもにも共通する不思議で素敵な反応です。
発表会で最後まで頑張る姿を見たとき、運動会で力いっぱい走りきった瞬間、思いがけない言葉をかけてもらったとき。胸の奥がじんわり熱くなり、気づくと涙がこぼれていることがありますよね。
これは、強い喜びや感動が心の中にたまりきらず、身体の反応として涙になって表れるからだといわれています。気持ちがこみ上げると心拍数が上がり、呼吸も浅くなることがありますが、涙はそれらを落ち着かせる役割も持っています。
“涙が出るほど嬉しい”という現象は、心がしっかり動いている証拠でもあるのです。
子どもに説明するときは、「心がポーンって動いたとき、涙も一緒に出てくるんだよ」と伝えると、とてもイメージしやすくなります。「悲しいときに泣く」だけではなく、「うれしくて泣く」という感情の豊かさを知るきっかけにもなります。
また、嬉し涙は子どもの自己肯定感にもつながります。「こんなに頑張ったんだね」「うれしい気持ちが心いっぱいに広がったね」と伝えることで、子どもは「自分の気持ちは大事なんだ」と自然に理解していくからです。
親が泣いたときの子どもの反応
親が嬉し涙を流す場面は、子どもにとって忘れられない体験になることがあります。
私も息子の卒園式で涙が止まらなくなってしまったことがあるのですが、息子はちょっと驚いた顔をしつつ「ママ泣いてるの?」と笑いながら寄ってきてくれました。その瞬間、涙が“悲しいもの”ではなく、“家族の温かさを感じるもの”として子どもの中に刻まれたように思います。
親が嬉しくて泣く姿を見せることは、子どもにとって感情表現の良いお手本にもなります。「嬉しくても泣いていいんだ」「涙っていろんな気持ちの形なんだ」と知ることにつながるからです。
感動したときに涙が出るのは、決して特別なことではありません。それは、家族の時間や努力の積み重ねが心に届いた瞬間として、とてもまっすぐで自然な反応。
嬉し涙を共有した出来事は、親子の記憶の中でそっと輝き続ける“温かい思い出”になります。
目が痛いと涙が出る理由
ゴミや刺激から守る反応
玉ねぎを切ると涙がとまらなくなる、あの“あるある”現象。これは、玉ねぎの刺激成分が目に触れた瞬間、体が「危ないかも!」と判断し、刺激を薄めて洗い流そうとして涙を大量に出す仕組みです。
この反応は玉ねぎに限らず、ほこり・風・乾燥・強い光など、目に負担がかかりそうな刺激でも同じように起こります。
実は涙腺(るいせん)は「洗い流すモード」に入ると、普段よりもずっと多くの涙を一気に作り出します。これは、目を守るためのとても素早い防御反応。
涙は“目を健康に保つための自動防御システム”として働いているのです。
子どもに「痛いから泣いちゃったの?」と言われたときは、「痛いときは涙が目を洗って守ろうとしてくれるんだよ」と伝えてあげると、仕組みへの興味がぐっと深まります。怖がったり恥ずかしがるのではなく、「体ってすごいね」という前向きな気持ちにもつながります。
痛みが強いときの“助け”として
転んだとき、ぶつけたとき、急に痛みが走ったとき――涙が一気に出てしまうことがありますよね。これは目が痛いわけではなく、身体が強い痛みに驚き、緊張した心を緩めようとしているサインです。
人は痛みを感じると、全身の筋肉がぎゅっとこわばり、呼吸も浅くなります。そのままだと苦しさが増してしまうため、涙が出ることで心拍数や呼吸を整え、気持ちを落ち着かせてくれるといわれています。
「痛いと涙が出る」のは、弱さではなく、身体が自分を守るために働いてくれている反応なんですね。
子どもが痛みで泣いたとき、「泣かないの!」と言ってしまいがちですが、その前に「涙が助けてくれてるね」と声をかけてあげると、子どもは安心して落ち着きを取り戻しやすくなります。
痛みの涙にも“体と心を守る理由”があると知っていると、親も子どもも気持ちが軽くなりますし、心のケアもぐっとしやすくなります。
涙は、目だけでなく心まで支えてくれる存在。子どもにとっても、大人にとっても、とても大切な反応なのだと改めて感じられます。
涙について親子で話すときのコツ
ひとことで説明しすぎない
「涙=悲しいもの」というイメージは、親にとっても子どもにとってもとてもわかりやすい考え方です。でも、実際の涙にはもっといろいろな役割があり、それを知ると子どもは自分の感情をより柔らかく理解できるようになります。
私は息子に、「涙って3つの種類があるんだよ」と話すようにしています。
・目を守る涙(ホコリや乾燥から守る)
・気持ちを落ち着かせる涙(悲しさや不安を外に出す)
・嬉しくて出る涙(心が動いたときにあふれる)
この3つを分けて説明すると、息子は「涙って悪いものじゃないんだ」とすぐに理解してくれました。気持ちの整理がうまくできない年齢でも、「涙にも種類がある」と知ることで、自分の反応を安心して受け止めやすくなるのですね。
とくに子どもは、「どうして涙が出たのか」をうまく言葉にできないことがあります。そんなときに、親が整理された形で伝えてあげると、「あ、これは心のお仕事なんだ」と自然に納得できます。
“涙はひとつじゃない”と伝えることが、子どもの感情理解の助けになるのです。
子どもの感情を否定しない言葉選び
子育てをしていると、「泣かないの」「もう泣き止んで」などと言いたくなる場面がたくさんありますよね。でも、涙をすぐ止めさせようとする言葉は、子どもにとって「悲しんじゃいけないんだ」「気持ちを出しちゃいけないんだ」という誤解につながることもあります。
そんなとき、まずひとこと「悲しかったね」「びっくりしたね」「痛かったね」と気持ちを言葉にしてあげると、子どもは驚くほど安心します。
親が自分の感情を“わかってくれた”と感じた瞬間、子どもの心は一気に落ち着くんです。
私自身も、息子が泣いているときには、気持ちを推し量って言葉にしてあげるようにしています。すると、息子は泣きながらでも「うん…こうだったの…」と少しずつ話してくれるようになります。気持ちを否定されないことで、涙を通して心を整理する力が育っていくのを感じます。
また、涙の話はそのまま“感情の話”につながり、親子の会話がふっと深くなる瞬間が増えます。「涙って不思議だね」「どうして泣きたくなるんだろうね」と話すだけで、子どもは自分の心に興味を持てるようになるからです。
涙を止めさせるより、涙の理由を一緒に見つけること。それが、親子の信頼関係を静かに育ててくれる大切な時間になります。
まとめ|今日の会話で“涙のひみつ”をひとつだけ伝えてみよう
涙には、「目を守るため」「心を落ち着かせるため」「嬉しさがこみ上げたとき」など、本当にたくさんの役割があります。
でも、すべてを一度に説明する必要はありません。大切なのは、子どもが「涙は悪いものじゃないんだ」と安心して理解できること。その第一歩として、今日の会話の中で“涙のひみつ”をひとつだけ伝えてみてください。
たとえば、
「涙は目を守るお掃除なんだよ」
「悲しいと涙が助けてくれるんだよ」
「嬉しくても涙が出るんだよ。心が動いてる証拠だよ」
こんな短いひと言でも十分です。
その小さな会話の積み重ねが、子どもにとっては“自分の気持ちを大切にしていいんだ”という安心感につながります。そして、親であるあなたにも、子どもの心の動きがよりやさしく見えてくるようになります。
今日ひとつだけでも伝えてみることで、親子の気持ちの距離がそっと近づき、涙をめぐる時間が温かい学びのひとときになりますように。

