ある日、子どもに「なんで磁石って北と南で引き合うの?」と聞かれて、私は一瞬返事に迷いました。科学的なことは説明しづらいけれど、せっかくの“興味が伸びる瞬間”は大切にしたいんですよね。
そこで今回は、親子で一緒に話せるように、難しい仕組みをできるだけやさしくまとめました。おうちにある磁石で試せるミニ実験や、子どもとの会話に使える例え話も紹介しています。読んだあと、きっと「ちょっと話してみようかな」と思えるはずです。
磁石の“北”と“南”ってそもそも何?
磁石には必ず「N極(北)」と「S極(南)」という2つの性質があります。私自身、子どもに聞かれるまで深く考えたことがなかったのですが、「北と南」という言葉が出てくるのは、地球の磁力とのつながりがあるから。でも、まず子どもに伝えたいのは“磁石には2つの性格がある”というシンプルなイメージなんです。
「磁石には2つのキャラクターがいる」と説明してみる
小さい子には、理科の言葉より“キャラクター化”がいちばん伝わります。私がよく使うのは、「Nくん」と「Sちゃん」。
・NくんとSちゃんは、とても仲良し
・Nくん同士はちょっとケンカしちゃう
・Sちゃん同士も押し合ってケンカしちゃう
この3つだけ覚えてもらうと、引き合う仕組みや反発する感覚がスッと頭に入っていきます。
子どもって、擬人化した瞬間にグッと理解が深まるんですよね。磁石を前に「NくんとSちゃんは手をつなぎたがるんだよ」と言うと、目を輝かせながら「ほんとだ!」と確かめようとします。
NとSがある理由を少しだけ
親として知っておくと便利なのが、「なぜ2つの極があるのか」という背景。磁石の中には、小さな小さな“力の向き”がたくさんそろっていて、その向きが偏ることでNとSが生まれます。といっても難しい説明は不要。
私はいつも、
「磁石の中で、力が同じ方向にならんでるから、両端に性格ができるんだよ」
と伝えています。これくらいなら、専門用語なしで自然に会話できます。
実際に触らせると理解が一気に進む
説明だけより、手に取って触れる体験のほうが圧倒的に早く理解してくれます。
我が家では、冷蔵庫のマグネットを使って、
「ここはくっつくよ」
「こっちは逃げていくね!」
と楽しみながら一緒に確かめます。指先で押し返される“スッ”という感覚は、言葉よりも強く印象に残るようで、子どもは何度も試したがります。
特に、
“反発するときの不思議な動き”に子どもはすごく興味を持つ
ので、少し遊ばせてあげると「Nくん同士はケンカするんだよね!」と自分から言い始めます。
「方角との関係」も触れると理解が広がる
慣れてきたら、「N極が北を向きたがる理由」も少しだけ話しています。
地球そのものが大きな磁石だから、磁石のN極は自然と地球の“南極側の磁力”へ向く、という仕組み。だけど、これも難しく言う必要はありません。
「地球もすっごく大きな磁石だから、Nくんはそっちに行きたくなるんだよ」
この一言で十分です。子どもは“地球が磁石”という話にワクワクし始めます。
なんで北と南は引き合うの?
子どもにとって「どうしてくっつくの?」「なんで同じ向きだとダメなの?」というのは大きな疑問ですよね。私も最初はうまく説明できずに困っていたのですが、仕組みをやさしくかみ砕いて話すと、驚くほどスムーズに理解してくれました。
結論からいうと、磁石の中の“力の向き”が、お互いに気持ちよくそろうように働くから引き合うのです。
力の向きってどういうこと?
磁石の内部は、実はたくさんの“とても小さな力”が同じ方向にそろっている状態です。この向きのそろい方が、N極とS極それぞれの性質を生み出しています。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、子どもに伝えるときは細かい仕組みよりも「向きがある」というイメージさえ伝われば十分です。
たとえば、私はこんなふうに話しています。
「磁石の中には小さな矢印がいっぱい入っていてね、北と南を向くようにならんでるんだよ」
すると子どもはほぼ必ず「へぇ〜!」と不思議そうな顔をしながら磁石を手に取ってくれます。
N極とS極はどうして引っ張り合うの?
NとSを近づけると、磁石の中にある小さな矢印の向きが“ピタッ”と合うように働きます。向きがそろうことで力がまとまり、自然とお互いを引き寄せる動きになるのです。
ここで大切なのは、「NとSは、向きが合うから仲良しになる」という感覚。
力の向きがスムーズにつながるので、手で触ってみるとスッと引き合うのがよくわかります。まるで空気の中で見えない糸がスッと引っ張っているような不思議な感覚です。
パズルのピースでイメージするとわかりやすい
私はよく「パズルのピース」を使って説明しています。
・NとSは形がカチッとはまる
・NとNは形がぶつかって入り込めない
・SとSも同じようにぶつかる
たったこれだけで、子どもの頭の中で磁石の動きとイメージが一致することが多いんです。
そして実際にNとSをくっつけて「ほら、カチッと入ったね」と見せると、子どもは「ほんとだ!」と大喜び。
逆に同じ極どうしを近づけると、スッと逃げてしまう動きが“パズルが合わない感覚”そのものなので、「こっちは入らないね」と自然に理解してくれます。
“目に見えない力”を体験すると一気に腑に落ちる
大人でもそうですが、見えない仕組みは説明より体験のほうが理解が進みます。
だから私は必ず、磁石を手に持って感じてもらうようにしています。
「引っ張られたね!」
「逃げたね!」
こうした“リアルな手応え”があると、抽象的な話もすっと入っていくんですよね。
特に、
NとSが近づいた瞬間にスッとつながるあの感覚は、仕組みの答えそのもの
なので、説明と体験が一致して子どもの「なんで?」が満たされていきます。
同じ極どうしがくっつかない理由
磁石を触っていて一番おもしろい瞬間が、「同じ極どうしが全然くっつかない」という場面ですよね。手で押し付けているのにスッと逃げていくあの不思議な動きに、子どもは必ず「なんで!?」と驚きます。
その理由はとてもシンプルで、NとN、SとSは“力の向きが正面からぶつかってしまう”ために反発するからです。
磁石の内部では、小さな小さな力(磁力の向き)が同じ方向にそろっているのですが、同じ極どうしを近づけると、その力がちょうど正面から押し合う形になります。
そのため、パズルで形が合わずに押し返されるように、同じ極どうしは自然と「近づかないように」動いてしまうのです。
反発の力を親子で感じてみる
実際に磁石を手に持って近づけてみると、その反発の強さはすぐにわかります。我が家でも試してみたのですが、子どもが「え!? 押してるのに逃げる!」と大笑い。
スーッと押し返されるあの独特の感覚は、まるで“見えない壁に手を当てているような不思議な動き”です。
このタイミングで私は、そっとひと言添えるようにしています。
「同じ極どうしはね、力の向きがケンカしちゃうんだよ」
すると子どもは「あー!だから逃げるのか!」と一気に納得。
ただ説明するより、“自分で感じた不思議”と答えがつながる瞬間って、すごく理解が早いんですよね。
反発を使ったちょっとした遊び
もう少し深く理解したいときは、簡単な遊びを取り入れるのがおすすめです。
・同じ極どうしで“ふわっと浮かせる”ように手を離してみる
・磁石を机の上でスーッと滑らせて、どう逃げるか観察する
・NとN、SとS、NとSで動きのちがいを見比べてみる
どれも数分あればできて、子どもの興味がぐっと広がります。
とくに「浮いた!」と感じられる瞬間は、反発の力そのものを体験しているので、説明よりはるかに印象的です。
身近なものにも“北と南”はひそんでいる
磁石というと、おもちゃや実験道具のイメージが強いかもしれません。でも実は、私たちの暮らしの中には“北と南”の性質がそっと組み込まれているものがたくさんあります。
子どもにとっても、「家の中のあれにも磁石?」「これも?」と発見が続くワクワクの時間になるので、ぜひ一緒に探してみてください。
方位磁針は地球の磁石に反応している
方位磁針の針がいつも北を指すのは、地球がものすごく大きな磁石になっているから。
地球にも「N極」と「S極」があるという話をすると、子どもは必ずといっていいほど目を丸くしてくれます。
「えっ、地球って磁石なの?」
「じゃあ地球にもNくんとSちゃんがいるの?」
こんなかわいい反応が返ってくることも。
方位磁針は、その地球の磁力に引っ張られて針が方向を決めています。といっても仕組みを深く話す必要はありません。
私はいつも、こんなふうに伝えています。
「地球がすっごく大きな磁石だから、針が“こっちだよ”って教えてくれるんだよ」
それだけで、子どもの中で「磁石のお話」が身近な世界とつながり始めるのがわかります。
さらに興味を持ったら、家の中や近所で方位磁針を使いながら「どっちが北かな?」と探してみるのも楽しい体験になります。
冷蔵庫の扉にも磁石
大人は意識しませんが、冷蔵庫の扉が“ピタッ”と閉まるあの感じにも磁石が関係しています。
ゴムパッキンの中に細かい磁石が埋め込まれていて、扉が自然に閉じるように工夫されているんです。
子どもにとっては、「なんで勝手に閉まるの?」が不思議の代表格。
そんなとき、扉の端にそっと手を当てながら説明してあげると、
「え、ここにも磁石?」
「じゃあNくんとSちゃんがいるの?」
と、またひとつ発見の輪が広がります。
冷蔵庫の扉をゆっくり閉めていくと、最後の数センチでスッと引っ張られるあの感覚。実はこれこそ、磁石同士が引き合っている証拠です。
家の中で自然に起きている仕組みを知ると、科学が“特別なもの”ではなく“生活とつながったもの”に変わっていきます。
その他にも、意外と磁石が使われている
身近な例を挙げると、探してみればたくさんあります。
・バッグや財布の留め具
・スマホケースのフタ
・パソコンのカバーの閉まり
・扉のストッパー
・イヤホンやスピーカーの内部
このように、磁石は生活を便利にするために多く使われています。
子どもと一緒に「磁石探し」をしてみると、想像以上に家中に“北と南”が潜んでいることに気づき、親子でちょっとした冒険気分になれますよ。
おうちでできる簡単“磁石あそび”
磁石のふしぎは、特別な道具がなくても家庭でたっぷり体験できます。むしろ“身近なものだけでできる”という手軽さが、子どもの好奇心をより強くくすぐってくれるもの。
ちょっとした遊びのつもりが、気づけば科学の第一歩になっていた…なんてこともよくあります。
ここでは、親子で一緒に楽しめるシンプルな遊びを、少し深掘りして紹介します。
① マグネットで“引っ張りっこ”
まずは定番の引き合い・反発を手で感じる遊び。
2つの磁石を持って、近づけたり離したりするだけでOKです。
・NとSを近づけるとスッとくっつく
・NとN、SとSは押し返すように逃げていく
この“逃げていく”感覚は、初めて触った子どもがほぼ確実に驚くポイントです。
さらに、磁石を机の上で滑らせて同じ極どうしを向けると、まるで生きているかのようにスーッと遠ざかっていきます。この動きを見せると、
「なんで!? 勝手に動いた!」
「ケンカしてるの?」
と子どもの声が一気に弾むんですよね。
手で“力の存在”を感じる体験は、知識よりも深く記憶に残ります。
② クリップ何個つながる?
磁力の強さを“見える形”で楽しめる、わかりやすい遊び。
冷蔵庫用のマグネットでも、十分に遊べます。
やり方はとても簡単です。
-
磁石を1つ持つ
-
鉄製のクリップを1つくっつける
-
そのクリップに次のクリップをつけていく
すると、クリップが“列”になってぶら下がっていきます。
何個まで行けるか挑戦すると、子どもは必ず真剣モードに。
「まだいけるかな?」
「あと1個だけ…!」
そんなやり取りをしながら、つながっていく様子を楽しめます。
途中でストンと落ちたときも、それはそれで発見のチャンス。
「ここまでが磁石の力の限界だったね」と話すと、子どもの中で“強さ”のイメージが形になります。
また、クリップ以外にも
・安全ピン
・細い釘
・画びょう(先端に注意)
なども試せるので、家の中の“くっつくもの探し”で自然と遊びが広がっていきます。
③ 方位磁針を作ってみる
ちょっと工作の要素も入った、親子で楽しめる実験。
針とコルクと水というシンプルな材料で、小さなコンパスが作れます。
基本の手順はこちら。
-
針を磁石にこすりつけて、磁力を持たせる
-
コルクやストローの小片に針を乗せる
-
水を張ったボウルに浮かべる
しばらくすると、針がゆっくりと回りはじめ、一定の方向で止まります。
初めて見た子どもはほぼ必ず、
「え、針が勝手に動いてる…!」
と目を輝かせます。
ここでひと言添えると、理解がさらに深まります。
「地球にも北と南があるから、針がそっちを向こうとするんだよ」
この瞬間、磁石の話が“地球”という大きな存在とつながって、子どもの世界がグッと広がるのを感じます。
工作感覚で楽しめるので、休日のちょっとした遊びにもぴったりです。
まとめ|今日の会話で“北と南は仲良し”をひとこと伝えてみよう
磁石の北と南が引き合う理由は、専門的な話のように見えて、実は家庭の中でも気軽に触れられるテーマです。
今日紹介したように、
・NとSは自然とくっつく“仲良しさん”
・NとN、SとSは押し合って“ちょっとケンカ”
・磁石の力は目に見えないけれど、手に取るとしっかり感じられる
この3つだけでも、子どもの「なんで?」がすっと満たされていきます。
そして、ただ説明するだけよりも、親子で一緒にマグネットを触りながら話すほうが何倍も伝わりやすいんですよね。
NとSがスッとくっつく感触、同じ極どうしが逃げていく動き。
そうした“体験”と“ことば”がセットになると、子どもの理解が一気に深まります。
特に、
「北と南は仲良しなんだよ」
というひと言は、小さい子にもすっと届く魔法のフレーズ。
これさえ覚えていれば、磁石の不思議を楽しく学ぶ入り口になります。
まずは今日、冷蔵庫のマグネットでも、おもちゃの磁石でも構いません。
子どもと一緒に少し触ってみる時間をつくってみてください。
そのたった数分の会話が、親子の“学びの時間”をふわっと温かくしてくれますように。

